1k≒innocence

散文だったり、アニメ分析だったり。日常が切り取られていく姿は夏のよう。

「スクールガール・オタクコンプレックス」という新条アカネの生み出した怪獣に、僕は…。

SSSS.GRIDMANという名の怪獣がインターネットを蹂躙するようになって、はや数ヶ月が経とうとしている。

特に一部のオタクたちは新条アカネという麻薬に人生を棒にふりかけている。助けてグリッドマン
 

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新条…


その根幹には上田麗奈さんの天才的ないじらしい演技が肝であるわけで、曇りのない透明な声に時折乗ってくる苛立ちや嫉妬の演技とのコントラストに毎話息が止まる思いであります。
皆さんお元気ですか。私は毎週ギリギリです。
 


そんな中放映された最新話9話では一気に物語が核心へと進み、特にこれまでつかみどころのなかった新条アカネの心象がかなり深いところまで描写された。
 

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直近までの物語では、新条アカネはすべてを掌握した存在のような尊大な性格を見せていたわけだが、実際、真に求めているものは友達やつながりといった普遍的なもので、自身の強大な能力をもってすらそれを手に入れられずじまいでいる様子が描かれた。
そこから見えてくる新条アカネの姿は、孤独で、ステレオタイプ的なぼっちと言っても過言ではない、とても小さなものだった。
 

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このことは新条アカネに少なからず関心を持ってきたオタクにとって、その心をかき乱すのに余り余って重要な事実であった。

新条アカネとはスクールカースト最上位の女であった。
新条アカネとは特撮オタクであり、フィギュアとふたばを愛する、片付けができないだらしない女であった。
新条アカネとはキレるとモニターを足蹴にする女であった。
新条アカネとは自分の役に立たない人間はモノとも思わない女であった。

これまで描かれてきた人物像から突然浮き彫りになったその本質は、孤独としか言いようがないものである。

リア充でオタクの美少女、まさにオタクたちが求め続けてきた女は、孤独に呪われ、縛られていた。
 
それはオタクが自身のメンタリティを投影するには十分な設定である。

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同じクラスにいるにもかかわらず、永劫繋がりなんてできることがないであろうスクールカースト上位の女。
彼女の本質と、その孤独を知ってしまった視聴者が感じるエンパシー。
僕はこれをスクールガール・オタクコンプレックスと呼ぶことにした。

これは二次元コンテンツで一般的となった「ギャルは実はいい奴」論に近い。同じクラスにいたあのクラスの女子にも、自分の存在をみてほしい。そんな願望。
 
自分とはきっと違う世界に生きる女。
正しい世界にいるように見える女。
その実は、我々とほとんど相違ない存在だと知ってしまったら―
 

 

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「キスとか、しないんすか?」

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新条…

 

「マミ美は、こうしないとあふれちゃうんスよ」

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ONE LIFE..

それはFLCLの1話でも見られた、タッくんとマミ美の曖昧な関係にも似ている。
本当ならタッくんの兄を求めるべきマミ美は、手頃な距離のタッくんで自らをごまかす。
言葉では拒否するタッくんも、求められることにまんざらでもない。

共依存の典型である。
そんな共依存の関係を、新条アカネと視聴者であるオタクはメタ的に保とうとしているのだ。
 
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新条アカネは悪いやつである。気に入らない人間はなんの感慨もなく抹消する。
だが心の弱さに裏付けされた悪い女に、オタクは弱い。
新条アカネは欲しいものを見つけるために、破壊するという行為を選択しているだけなのだ。
だがその心は全く満たされることはないだろう。

 


万能であり、孤独であり、退屈。


本作での彼女の処遇は、既にOPによって示されていると考えている。
 

 


主題歌で特に印象的な歌詞である「君を"退屈"から救いに来たんだ!」というフレーズが、グリッドマン(同盟)が新条アカネを救済することを示していることは明白であるが、問題はその「救われ方」がどうなるかである。

原作である電光超人グリッドマンでは、怪獣側に藤堂武史という人物が出てくる。彼もカーンデジファーという魔王に操られ、共同して怪獣を生み出していた。
終盤、藤堂武史は主人公たちのはたらきかけによって改心し、自身の能力で魔王の打倒に助力した。

翻って新条アカネはどうだろうか。
宝多六花が中心となって、グリッドマン同盟が彼女を助けようと尽力するであろうことが9話終盤で示されている。

だが今のままでは、助けられた先に本当の意味での彼女の救いはない。
なぜならもし本当に登場人物を含めたすべてのモノ・人が新条アカネによって創られたものだとしたら、彼女を助けようとする六花たちの思いすら新条アカネを基とした作り物だったとことになる。

なんでも都合よく作れる世界なのに、本当に彼女が求めているものはその世界から一向に与えられることはない。

9話時点で、夢の中ですら思い通りにいかない新条アカネは相当に絶望している。

おそらく次に彼女が破壊するのは今の世界そのものか己自身か、あるいはその両方だろう。
「新条アカネの喪失」はすでにOP/EDで暗示されているのだから、なんら不思議なことではない。

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我々は彼女が潰えるを見守るしかないのか。

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「私はずっと夢を見ていたいの」

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グリッドマン同盟は彼女を助けるだろう。
その想いが新条アカネにとって、ただの作り物にしか見えないか、あるいは自らの創造を超えた何かとして捉えられるか。
本作の結末はすべてそこに掛かっているだろう。

グリッドマン、そしてグリッドマン同盟が、我々視聴者のオタクも救ってくれることを願ってやまない。なぜなら新条アカネの救済こそが、新条アカネに心奪われたオタクを救うただ一つの方法なのだから。
 

たくさん失う 時がながれゆく

それでも僕は、君を待ってる

short hair/BaseBallBear

 

 

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