1k≒innocence

散文だったり、アニメ分析だったり。日常が切り取られていく姿は夏のよう。

多田李衣菜と前川みくが好きすぎて書いたSSの元ネタが音源化するの決定してて解脱してます

 

アイドルマスターシンデレラガールズ多田李衣菜前川みくのコンビが好きすぎる影響でこの1ヶ月ずっとこれ書いてましたのでブログ停止してました。

女の子の前川を考えては胃痛が再発し、だらしない多田が変わっていく瞬間を考えては動機が激しくなっていました。

 

さてタイトルの水中メガネは99年に作詞松本隆、作曲草野マサムネで仮面シンガーchappieがリリースした楽曲ですが、奇しくもこの楽曲が草野マサムネの歌唱で、今年の松本隆トリビュートアルバムに収録されるようです。

 

 

 

草野マサムネがこの曲を歌ったのは99年の松本隆トリビュートライブでの一度きりで、この16年間、そのブート音源だけでしか確認できないものでした。

VHS時代の音源のためひどい音質で、毎回ボロボロのカセットテープを回すような日々であったわけで、今回ついにスタジオ音源としてリリースされるのが本当に…もう…ううっ…

 

みんな水中メガネ歌詞読んで!!

頼む!!

あと楽曲も聞いて!!

それからSS読んで!!

 

ありがとう松本隆

ありがとう多田李衣菜前川みく

 

 

マグリットから学ぶ裏切りと解放のしくみ―「青い子なんて言わせない」

先日、新国立美術館で開催中のマグリット展に行きました。

 

行くまで知らなかったのですが、現在ルーブル展も同時開催されております。

チケットを買いに並んでいると

マグリットはうーん…よくわかんないよね(笑)」

「ねーなんか変だよね(笑)」

という渋い会話が前のカップルから聞こえてきました。

もちろん彼らはルーブル展のチケットを買ってましたとさ。

そりゃルーブルルーブル(愛)だからね。お二人様、それは至極まっとうな思考ですぞ。

僕もルーブル展行こうとか素直に言えるような人生を送りたい。

 

そんな思いを乗り越えた向こう側で観覧したマグリット展。

そこから学んだ裏切りの方法が本日のテーマです。

少し真面目な話。

  •  裏切りの実施例(およびその体験)

ではまずこの作品のタイトルを想像してください。

 

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決まりましたか?

 

 

 

この作品のタイトルは『呪い』です。

繰り返します。 『呪い』 です。

…急に不穏になってきましたね。

 

次です。

 

この作品のタイトルを想像してください。

 

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もしかしたら当たった人もいるかもしれません。

『前兆』です。

今にも雪崩が起きるかもしれない不安な絵になりました。

ちなみにどちらの作品もこの展示で見ることが出来ます。呪いや前兆を是非、生で感じてきてください。

 

このようにマグリットは作品に一見無関係なタイトルを付すことで、観客が絵画に対して持つであろうイメージを崩しにかかるという方法を採っています。

 

このイメージの崩壊を可視化すると以下の様なフローになります。

 

「わーきれいな空の絵だなあ」

「この作品のタイトルは『呪い』です。(ただし呪いと言っているだけで、この作品自体が呪われてるとか、そういうことを説明しているわけではない)

「えっなにそれこわい。この作品にどんな意味があるのだろう(しかし何が怖いのかは観客にも説明できない。ただ漠然と、自分の中にある「呪い」という単語に含まれる概念をこの絵画に重ねているだけで、この作品自体に怖さがあるわけではない)

 

 

この方法を最も端的に示したのが、有名作『イメージの裏切り』です。

 

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どう見てもパイプの絵なのに、下には「これはパイプではない」という一文。

ではこのパイプ(のようなもの)はなんなのか?

観客は絶対に示されない答えを悶々と考えさせることになります。

 

作品の視覚情報が持つ常識や普遍的なシニフィエ(表象される概念)を、タイトルやキャプションによって否定したり歪曲することで、観客は一気に常識から解放された状態で作品を鑑賞することになります。

マグリットはこの方法で観客へ「作品は自由に鑑賞してね」という姿勢を示しているように感じます。

 

「これは何に見えますか」

「パイプの絵ですね」

「これはパイプじゃないんですよ」

「えっじゃあなんなんですか」

「それは自分で考えてね~(ハァコリャコリャ」

 

といったように。

 

上述した作品以前に、タイトルが作品を作品たり得るようにした前例があります。

 

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『泉』マルセル・デュシャン

 

「マット=サン(デュシャンは敢えてマットという偽名で出品した)、これは便器では?」

「これは『泉』という美術作品です」

(買ってきた便器にサインしただけだけどね)

「アイエエーないわー!!こんなん美術じゃないわー!!出展ダメね!!」

「(デュシャンが別人として批評)彼が既成品を美術作品にしようとする姿勢自体は否定されてはいけないのでは?」

ぐぬぬ

 

本作は美術館の作品は美術たらねばならない!!という当時の姿勢を風刺した作品でもありました。

いかに人間が既に自分の中にあるイメージや設定、情報で作品を鑑賞しているかがわかります。

「値の高いモノなんだからきっと素晴らしいものなんだ」

この手の思い込みのような姿勢は、日常のそこここに潜んでいるように感じます。

 

  • 現代のコンテンツに見る裏切りの方法

そして実体のイメージと相反したキャプションをつける行為は、最近だと画像大喜利サービスboketeで体現されています。

 

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元の画像は死の舞踏の一枚だったか黒死病の風刺画だったかと思うのですが、この実体が本来持っている非常にシリアスなイメージを、全く無関係なキャプションによって裏切ることで笑いが成り立っています。

 

しかしイメージを裏切って「笑わせる」ことを目的としているので、マグリットの方法に比べて観客の自由度は格段に下がっている点が異なります。

よって観客を笑わせられなかった場合、イメージの裏切りサイクルから外れてしまいますから、この作品は「スベった」という評価をつけられることになります。

 

人を惹きつける「裏切り」がどんなものか、なんとなく見えてきたことと思います。

こうして見ると、視聴者を大きく裏切って大成した映像作品として思い出せるのは魔法少女まどか☆マギカです。

 

ひだまりスケッチ蒼樹うめのかわいいキャラデザ」

「シャフトのポップな画面」

「カラフルなトーンの魔法少女アニメ」

は、第三話でその様相を大きく裏切りました。

 

視聴者が無意識のうちに強固に作り上げてしまっていた「この世界観でこんなことが起こるはずがない」という前提を派手に取り壊すことが、本作に仕掛けられたトラップでした。

 

裏切りという手法が人に与える効果は、今も昔も変わらないようです。

 

  •  まとめ

「AなのにB」という裏切りを大成させるため

 

・Aのイメージを出来る限り強固に作り上げ

・「Aにこんなことがあるはずがない」という、裏の概念を自分の中で強化し、Bとして体現する

 

というフローを意識づけることが、観客への大きな揺るがしを与える手法のひとつではないかと考えずにはいられない一日でした。

 

というわけで最後に僕の考えた最強のイメージの裏切りを置いておきます!!!

 

 

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La jeune fille sera heureux.

(この娘は幸せになります)

 

おしまい。

 

※追記

 

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冒頭で書いたとおり、マグリットもまた他のシュルレアリスム作家同様、「ちょっとよくわからない」という印象があると思います。

しかし一時期は上記の『不思議の国のアリス』のように印象派のような明るい柔らかなタッチを志向していた時期もあったようです。

その理由もまた当該展示で確認できます。

magritte2015.jp

 

展示は6/29まで。

【4/23 解読完了】ヘスティアナイフの文字解読がしたかったけどロキ様のかわいさを伝えたかった話

【4/23 解読完了しました】

 

『ダンまち』の世界には看板や名前に書かれているアルファベットベースの文字(というかアルファベットそのまま)が使われているが、今回最新話で別の文字が出てきました。

 

だいたい12:30あたり。

ヘスティアナイフに刻まれた文字はどうもひらがなベースのようです。

 

今のところ峰の方から順に読めたのはここまででした。鍔の方から読んでます。

スペースのところで改行してます。

4/22更新

・「文字の左上にひとつ点」で濁音。 

・「っゃゅょ」はそのまま小文字で表現。

4/23更新

・ほぼ確定したテキストを太字。 

・「ろ」「も」「ま」「こ」「て」の区別に困る。

4/23更新2回目

・一部修正して完了。推測で埋めた文字は[ ]で囲む。 

 

1行目

そのみをかたちづくるのはしんじつのぎん

(その身を形作るのは真実の銀)

[み]すり[る]のかがやき

(ミスリルの輝き)

ミスリルRPGでよく出てくる高い銀。true-silverとも呼ばれるので真実の銀。だいたいオリハルコンよりは価値が低い。

まことのひかりは ほかのだれもがてにしたところで

(真の光は 他の誰もが手にした所で)

2行目

そのかがやきをくもらせる

(その輝きを曇らせる) 

こころせよ

(心せよ)

やいばをぬくことができるのは

(刃を抜くことができるのは)

なんじがみとむ

(汝が認む)

3行目

なんじとちをわけたつかいてただひとり

(汝と血を分けた使い手ただひとり)

 

4行目(刃の部分)

なんじ[め]がみへすてぃあの[ぶ]んしんなり

(汝 女神ヘスティアの分身なり)

やみをきりさくろのほのおをや[どし]

(闇を切り裂く炉の炎を宿し)

あるじのみちをきりひらけ

(主の道を切り拓け)

えいえんのはんりょとなって あるじをまもれ

(永遠の伴侶となって主を護れ)

 

峰の方がヘスティアへのメッセージ、刃の方がベル君へのメッセージでした。

えーと、あれですね。

端的に言うと

リア充お幸せに!!」

という内容でした。つらい。ほんとうにつらい。

 

『解体新書』が翻訳作業に入った当時、「眉毛は目の上に生えている毛です」という一文を翻訳するの2日かかったという話がありますが、翻訳や解読作業をしているとどうしても解けていく楽しさと文章の内容が比例してしまう(もしかしてすごいことが書かれているのでは!?)という感覚を身をもって体験しました。

 

でもこれで最新話以降、同じようなテキストが出てきた時にささっと読めるようになりました。

"""違いのわかる人"""としてダンまちをエンジョイしていく次第でございます。

 

ひらがなカタカナベースの漫画文字といえばやはりハンターハンターの文字が有名ですが、だいたい上下反転、線対称の記号化、画数の簡素化/複雑化、アルファベット表記の改変で構成されてるのが常かと思っているのですが、素人が解こうとすると意外と大変だ…。

濁点/半濁点の法則も見えてこない。

 

最新話配信までゆっくり解こうと思います。

全部解けたら褒めてください。

 

 

 

※ここから本文

アアアー!!!

 

ロキ!!

 

ロキちゃん!!

 

ロキ様!!

 

ヤスダスズヒトのキャラデザなのに!!なのに!!

どォゥしてッ!!そんな極限まで削ぎ落としたッ!!御姿ッ!!デッ!!この世界に顕現してしまったのォー!?

だがそれがいいィッ!!無駄のないその御姿(主におなか)とッッ!!

どこから覚えてきたかわからないッ胡散臭い関西弁がァーガッ!!!!

ンンン!!

 

マァーヴェラスッ!!!!

シカコォォグッド!!

 

 

ヘスティア様に押されに押されて全然pixivでイラストが増えないロキ様ァ!!

 

だが僕にはわかる!!ロキ様が実はすっげー大物だってこと!!ンガッ!!

僕だけェの!!トリックスタァーにッなってェ!?いろんなイタズラしてくれェー!!

しまいには野火になって!!この下賎なる身を焼いてくれェー!!

アッアッアー!!(ここで絶命する)

 

(pixivのイラスト、ロキ様は4/21時点で8作品くらいしか見当たらない。ヘスティア様は4000件を超える)

 

 

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)

 

 

風邪が治らないから寝るよ!!!(本当に治らない)

ヘスティア様のヒモになるのは一筋縄ではいかないようです(ヒモだけに)

2015年春クールのアニメが始まりました。

しぶりん~みくにゃん~みゃーもり~えまたそ~とやいのやいの言っているうちに世間ではだいたい雪は解け北陸新幹線が開通し、東京の桜はほぼ散りました。

ちなみに僕の地元ではアニメが映らないしまだスキー場は開いてるし花見はゴールデンウィークにやるものなので2015年の冬クールは終わっていません(そもそも始まってもいない)

 

消費税にもならない昇給を見ないふりをし、悲しみを忘れないままに桜の若葉萌ゆるにも勝るスピードで新作アニメを見始めました。

Fateだの苺ましまろ再放送だのアルスラーン戦記だのと、いよいよ最先端が何かわからなくなってきている混沌した番組構成の中、僕のアニオタ要素を積み続けてきてくれたJ.C.Staffから爆弾が届けられました。

 

 

 

 

 

 

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!?

 

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!?!?

 

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!?!?!?

 

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』

神を自称するふにふにした彼女を縛る「ヒモ」は瞬く間にインターネットを席巻し、「ヒモになりたい」という言い回しが持つ本来の意味合いを数日の間に書き換え「ヒモ(物体)になりたい」という意味になってしまいました。

キャラクター原案ヤスダスズヒトの破壊力は伊達ではなかった。あとロキちゃんのおなか。犯罪だ。

僕だってなれるものならヒモになりたいし叶うなら経済的にもヒモになりたい!!

バブみという単語が伝播し始めてはや数ヶ月経ちますが、オタクは赤ん坊の次はヒモになることを希求しているようです。もはや生き物でもなくなった。

 

だが待てしばし。本作の1話を繰り返し(主にAパート6:10-以降)を繰り返し見る度、ヘスティア様のヒモは聖人のような存在なのでは?という気持ちになってきたのです。

 

絶対に離れてはいけない(ただし向こうの都合で離されるときはある)

作中、ヘスティア様はとにかく元気。

腕を振り回し、主人公ベル君に跳びかかり、時に怒って家から飛び出してしまう。

それでも文句を言わず常にくっついていなければなりません。

その割に着替えの時はヘスティア様の都合で外されてしまう。

そんな彼女の都合通りについていかなければ彼女のヒモにはなれない。

 

絶対にキレてはいけない

どんなに腕を広げびろんびろんに伸ばされても、簡単にキレてはいけません。

そんな柔軟性を持ち合わせ、振り回されるがままに耐えなければヒモにはなれない。

 

彼女の大事な所を支え続けなければいけない

ヒモはヘスティア様のふにっとしたむにむにのアレを常に支え続けなければいけません。

これは一種のご褒美とも言えますが、残念ながらヒモゆえに支えることしかできず、それ以上のことは何も出来ない。ヒモだから。

そんなギリギリのところでのお預けを永劫耐えなければヒモにはなれない。

 

そしてなにより、ヒモがどんなに頑張ったところでヒモはヒモ。

残念ながらヘスティア様の気持ちはベル君一筋なわけで、おそらくヒモに気持ちを向けてくれる日が来ることはないでしょう。

その上でヘスティア様が隙を見てはベル君に甘言を囁きかけるのを間近で見続けなければならないのです。

 

嗚呼、なんて健気なヒモ。そして報われることのないヒモ。

 

それでもあのヒモが放つ存在感。

ヒモという人外が、これほどまで強く「なりたい」という憧れの存在になったことがあったでしょうか。

 

主人公ベル君の「強くなりたい」という気持ちと、「ヒモ(物体)になりたい」という気持ち。ここに大きな違いはないはずです。

この何者にも代えがたい純粋な気持ちの行く末を、本作とともに見届けたいと思います。

(おしまい)

 

理想のヒモ生活 1 (ヒーロー文庫)

理想のヒモ生活 1 (ヒーロー文庫)

 

 

「透明じゃないあなたは美(味)しい」―『ユリ熊嵐』はあなたに警告し、あなたを承認する。

 

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↑弱 肉 強 食 鮭 肉 サ ー モ ン


ユリ熊嵐』が最終回を迎えました。
幾原作品としては『少女革命ウテナ』、『輪るピングドラム』に続くオリジナルアニメで、1クールの作品としては類を見ない濃密さと整然性を保ちながら素晴らしい幕引きを迎えました。

 

 

 

「タイトルにユリとかマジかよ…」
「なんか画面が少女漫画チックすぎてちょっと…」
「この人の作品、用語とか設定が難しいからよくわからない…」

 

幾原作品の第一印象は「奇抜」と評される場合か多いと思われますが、いずれの作品に於いても描かれる人物描写やメッセージはどれも普遍かつ明確であり、奇抜なビジュアルや設定は飽くまでそれを引き立たせるための舞台装置でしかありません。

かくいう僕もピングドラムを初視聴した時「なんか面白いけどウーン?」というもやっとした感想しか得られなかったのですが、ユリ熊嵐の放送に合わせて並行して観直したところ「こんな綺麗な作品があるものか…」と最終話視聴後に呆然とならざるを得ませんでした。

 

 ↑ピングドラム視聴直後の感情(何も伝わらない)

今ならピンドラもバンダイチャンネルで見放題だ!!

http://www.b-ch.com/ttl/index.php?ttl_c=3033

 

1クールという短さもあり、ユリ熊嵐はこれまでのイクニ作品を理解するために最適な入門作としておすすめできます。
「今までイクニ作品にちょっと興味あったけどピングドラムも2クールだしウテナは4クールだし長くて…」と二の足を踏んでいた方、是非ともユリ熊嵐を見ましょう。
そしてまたこの記事を見に来てください。
きっと「そうだ、そうだよね」と笑顔になれると思います。

 


ここから下にネタバレを多分に含みながら本題に入ります。


■警告―あなたはクマですか?人ですか?

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↑こんないい子が…がうがう…

 

既存のイクニ作品でも多数見られますが、ユリ熊嵐に於いてもさまざまな相対性を孕んだ要素が散りばめられています。

クマ―人
透明な嵐に馴染む人―透明な嵐に馴染めない人(=悪)
大嫌い―大好き
スキ―キス
壁―扉
欲望―自律 などなど…

 

「クマが襲ってきたぞ-!!壁を作って人の世界を守れ-!!」と躍起になってたはずなのに、結局壁の中で透明だの透明じゃないだのと同士討ちをしている。
そしてそれは人の世界だけではなくクマの世界もそうだった…。
「あいつきらーい!!排除―!!」と拒絶した相手も、結局同じ構造の中で生きているのは非常に強烈なシニカルメタファです。

君―ワタシに、そうそう大きな差などないのです。

 

そして最終話で紅羽という人は、自らクマになった。
それまで「クマが人に化けることはあっても、人がクマになることはない。純然たる人だけを選別し透明な嵐となれ!!」と信じて疑わなかった人たちは恐怖します。

これは紅羽クマそのものに対しての恐怖ではありません。

 

「もしかして自分もいつかクマになってしまうのではないか、あるいは既にクマなのではないか??」という、絶対に誰にも拭えない恐怖です。
透明な嵐の人々は、明日には私はクマになっているのではないか…という恐怖と共に永遠に生きていかなければならなくなりました。

 

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「迷うな!考えるな!撃て!!」

 

思考停止が唯一の希望。
紅羽を撃つことは、将来の自分たちを撃つにも同義でした。

 

現実でも一緒です。
「犯罪者は重罰だ」と語る人も、ふとしたきっかけでその罰を受ける側に回る日を否定はできない。

完全な「正」などありえない。

 

透明な嵐という、巻き込まれた人々に安定(らしき)ものを与える空間は、外からでも中からでも、いつでも崩れる危険がある。

そんな警告が最終話で提示されました。


…ここまで読んで「そうだそうだ!!私のようなハジキものを生み出したあいつらめ!!お前らこそ透明な嵐だ!!」と、具体的にでもぼんやりとでも思ってしまった人。そうしたあなたこそが透明な嵐にもう巻き込まれているかもしれない。

だって透明な嵐は、巻き込まれてしまえばその大半が巻き込まれていることにすら気づかないのだから。

警告は常に外部だけに示されるものではない。
銃口は常に自分たちにも向けられているんです。

狩るものは狩られることもある。
そういうところは幾原監督の厳しさかなと思います。

しかし、厳しい人はそれだけ優しくもあります。

■救済―嵐の抜け方も、その後の生き方もあるんだよ

最終話で一番ひっかかったのは銀子のセリフ。
「食べる前に透明になったら美味しくないからだ、がう…」
これも相対性を以てすれば
「透明じゃないあなたは美味しい」
と、僕は読みます。


こんなこと言われたいし、言えたらそれはそれで誰かを救えると思いませんか。
透明でないあなたにこそ価値を見出してくれる人(クマ)もいるのではないか、そういう救いを感じずにいられないわけです。

 

そしてそれは既に透明な嵐にいてもできることです。
亜依撃子は透明な嵐を静かに抜け出し、メカこのみを「見つけ」出しました。
あなたはメカこのみかもしれないし、誰かにとっての亜依撃子にもなれるかもしれない。

 

スキを宣言するのは怖い?それも大丈夫。

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「約束のキス。僕からすればよかったんだ。ね?」


こんなにささやかに、しかし強烈に生を肯定するメッセージ。
そういう生き方を誰かとできたらステキですね。

「気を抜くな、しかしきっとあなたは見つけるし、見つけられるだろう」
そういう優しさを、前述の警告と同時に感じすにはいられないのです。

■これから

結局、ユリ熊嵐の世界は大して変わりませんでした。
銀子も紅羽も排除され、透明な嵐は相変わらずの安定を得た。

でも純花のスキが紅羽を動かしたように、今度は紅羽のスキが亜依撃子を動かした。
スキは人を動かす。愛の弾丸、LOVEずっきゅん。

 

“ふた ふた ふた 二人が急接近したあの日から
貝殻集めて歩くのやめました

ラブ ラブ ラブずっきゅん
ラブ ラブ ラブずっきゅんだね
ラブ ラブ ラブずっきゅん
君にほら ラブずっきゅん”


LOVEずっきゅん 【PV】 相対性理論 - YouTube

 

 

これぞセクシー、シャバダドゥ!!
(おしまい)

男だけど男性声優しか出ないFree!のイベント行ったら人生観変わった話

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↑見たことのない景色を見せられた筆者の様子(参考)

 

 

TVアニメFree!の中の人が出演するイベントに参加してきたのですがめっちゃ楽しかったです。

そもそもアニメは見るものの、中の人にそこまで興味が無いのでイベントの類には今まで行ったことがなかったのですが、今回機会あってチケットが手に入ったのでどんなもんやと、ほとんど興味本位で行った…のですが

めっちゃ楽しかったです。

「は?男が男性声優しか出ないイベント行って面白いとか本気で言ってんの?」とか聞こえてきそうですが本気で言っています。

周りが99.999999%女子しかいなくても作品愛があれば大丈夫!!しかも男性声優は憧れてしまうくらい素敵だぞ!!

 

Free!がどれくらい好きかというと2期最終話直後にこういうキモいポエムを書いてしまうくらい好きです。

「ただの人」へと成るための物語 -『Free!』七瀬遙へ捧ぐ- - 1k≒innocence

キモすぎて今でも読み返せないのですが、ちょっと前に拡散してたみたいなのでそれはそれで嬉しいですありがとうございます。

 

イベントの概要を書いてからQ&A形式で知見をシェアいたします。

どんなイベント?→主人公の水泳部とライバルの水泳部の合同文化祭。お前たち観客はマネージャーだ!!

会場は国技館。ステージ自体がモニターなのでプールになったりスクリーンになったり近未来的でした。客席は4面すべて客入りさせたので臨場感も高い。武道館もそうだけど、スタジアム形式の会場で片面潰すと端の席が死ぬので見た目的に寂しくなるから、僕はこういう4面開放のステージが一番好きです。

なにするの?→こんな感じでバラエティ番組みたいな作りだ!!

・キャスト登場、作中振り返りトーク、アフレコ裏話など

・キャストがセレクションした名シーン振り返り

・今回出演のなかったキャストからのビテオレター

・描きおろしイラストでファッションショー

・学校対抗水泳リレー対決ゲーム

・宣伝(新グッズ発売、劇場版公開決定など)

・生ラジオドラマ(文化祭で喫茶店やろう!!)

・作品ユニットライブ

・キャスト挨拶

詳しくはレポ上げてる方々を検索してみてください。全行程2時間半くらい。休憩なしでキャスト全員出っぱなし。本当に尊敬しました。

何がよかったの?→出演者のサービス精神が半端ない

観客をワーキャー言わせるためにキャストは本気です。出てればいいというものではない。

聖地巡礼の話題でもありましたがオタクにとって「おまらこういうの好きなんだろ?(上から目線)」というのが一番萎えるわけですが、イベント中一貫して感じたのは「お前らFree!のこういうところが好きなんだろ!?俺らも好きだぞ!!」というまっすぐすぎる熱意です。

出演者も我々と同じくらい作品を楽しんでいる、しかも目の前で。これほどファンにとって喜ばしいことがありましょうか。

男でも楽しめるの?→むしろ男こそ見るべき。男性声優は憧れるくらい素敵だ!!

アニメイベントにおいて出演する声優陣は非常に複雑な立場にあります。

・キャスト自身としてのステージング

・その作中でのキャラクターからの投影

「声優としてのイメージ」「キャラクターのイメージ」の両方を持ち合わせながら、ウン千人の注目を浴び、彼ら/彼女らを楽しませる。

遠征組と思われる荷物たくさんの方が非常に多かったことからも、こういう場において観客の期待値というものはとても高いわけで、逆にちょっとしたほころびが場を冷やしてしまう可能性も多々あるわけです。とてつもないプレッシャーだ。

そんな中、常に笑顔を絶やさず、(ある程度台本があるとはいえ)言葉を丁寧に選び、共演者を立てる。パフォーマンスのプロフェッショナル精神に満ち満ちた時間でした。

特に宮野真守はあらゆる立ち振舞いが洗練されていて、さりげなくかつ的確な進行を担う姿は並々ならぬ努力と才覚を感じずにはいられませんでした。

それを最も感じたエピソードを書いておきます。

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前述したCMコーナーで、本来であればエンディングで発表される予定だった新作劇場版公開の映像が流れるハプニングが発生。

泣き出す人が出るくらい、悲鳴にも近い大歓声があがる一方、ステージは完全に冷えきっている。このコーナーを仕切っていた島崎信長も言葉がない様子。

ここから宮野真守の機転。

「映像出ちゃったからせっかくなんでここで新作の話します!!」

(作品紹介の後)「また映像見たいよね?(見たーい!!)最後にもう一回流してもらうから皆知らないふりして盛り上がってね!!」

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裏方のミスを取り戻して笑いに変えるだけでなく、「劇場版CMを2回も見れる!!」という期待を観客に持たせるトークがスマート過ぎて息を呑みました。ハプニングをサプライズに変える妙技。

さらに最後の挨拶で「これでFree!が終わっちゃうなんて…ううっ…」と嘘泣きでダメ押しの一笑い。

もともと彼の人の演技がとても好きで今回関心が湧いたという面もあったので、こうした一面が見られたのはラッキーでした。そりゃ武道館も埋まるわ…。

(他のキャストの方にもいろいろ感じるところがあったのですが、長くなるので割愛します)

 

個人的な話。

社会人やってみたり、大学の同期が結婚したりしているの見ると、やっぱり周りを引っ張れる人ってのが魅力があるわけですね。

「お前(ら)俺についてこい!!」という言葉、これまで斜に構えて見ていたのですが今回のイベントでこれが言える人って本当かっこいいなと感じました。人を引っ張る=人を振り回しかねない責任があるのですが、だからこそ与えられるものがある。

声優になる予定は全くございませんが、同性の憧れの対象として男性声優はとても素晴らしい存在であることを強く主張して締めと致します。

どんな分野にも紳士はいるのだ。

紳士たるべく、強く生きていこうと決意いたしました。

 

 

最高の夏は終わらない…!!

 

 

 

※補足

この手のイベントは本当に女子だらけなので、開演までこういう状態になるのでそれを耐える精神が必要となります。

『アイドルマスターシンデレラガールズ』 第8話が世にもたらした神崎蘭子のセカイ-赤/青、光/影、右/左、仕事/プライベートを分ける前川かわいい

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なるほどこれが”ENGEL”…!!

デレマス8話すごかった。
今のところ本シリーズで一番面白いんじゃないですかね。
展開も心理描写も伏線も何もかも綺麗というか、アニメで押さえてて欲しい基本がわかりやすくかつ有効に散りばめられていて、何回見ても飽きない。
バンダイチャンネルなら本放送の翌日に見放題だぞ!!!


久しぶりに「やべえこれ記事書かなきゃ!!」という衝動がガッツリきたので頑張ります。テーマは「神崎蘭子の世界が丸写しだった30分」です。
最近アニメの演出に言及する人たちが本当に減ってきて寂しいんですけど(語る頃にはもう次のクールがくる)、「あーそういう見方もあるんだな」って思ってくれる方が少しでも増えてくれたらこれ幸い。
それくらいこの8話はわかやりすいし、本当出来がいいです。

 

 

 

その前に前川みくにゃんがかわいいという話をさせてください。

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ここのカット枚数めっちゃ多くて前川優遇されてる^~ああ^~

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猫耳は仕事」の前川^~プライベートは真面目な前川^~

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立てこもり事件以来、少しずつ皆の精神的リーダーになりつつある前川^~

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大阪出身の前川も寮生だった!!自室では実家に地元訛りで電話する前川見たい^~

 

ありがとうございました。

 

では本題に入ります。

 

神崎蘭子のセカイって?

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デビュー曲のPVからもわかるように、神崎蘭子の世界観は「光と闇」とか、「裏と表」とか、そういう二面性が主軸にあります。
一言で言うなら「アンビバレント」。
この世界観を投影した8話では、一貫してこの表裏一体が描かれています。

 

1,赤/青-信号機とマーブルチョコ

一番わかりやすいところだとまずは赤/青です。

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信号、ブレーキランプ、コーン、送水口、消火栓。
街中のあらゆる「赤」が蘭子の閉塞感を写しています。


これが武内Pとの相互理解の後では青信号に変わります。

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ここで赤のモチーフが大量だったのに対して青いモチーフはひとつかしないのは、飽くまで「やっと始まったばかり」という表現であり、武内Pの言葉を借りるなら「第一歩」の表現です。

 

信号の表現はシャフト作品やエヴァ前後のガイナックス(特に平松演出)に見られるます。カレカノAngel Beats!とかにもあったはず。
あとはあまり心理描写としての能力は薄いけど新海作品にも多いです。

 

さらにこの信号の表現は、武内Pがもらうマーブルチョコにつながります。

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蘭子がPに差し出すチョコは赤青黄。信号だ。


その中からPが選んだのは…

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青!!青です!!青いただきました!!

 

かな子→蘭子→武内Pと、相手を思いやる心が次々と渡っていくための青信号。かな子のお菓子はギャグアイテムじゃあないんです。
美味しいから大丈夫なんです。

 

2,光/影-傘と夕日

まずはこれもわかりやすいところから。

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傘に隠れて表情が見えない。

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アナスタシアの気遣いに、影から抜ける蘭子。
ふたりとも人の気持ちがわかるいい子です。

 

この極みがクライマックス。武内Pとの傘のやりとり。

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最初は自分の傘にも噴水の影にも隠れている蘭子。

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ちょっとだけ心を開けて、噴水からの影は抜ける蘭子。
あとは傘だけだ。

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 ついに傘の影から抜けた!!しかし物理的に離れてしまった!!

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ハンバーグ友達。

自ら影を抜けて、心を開く蘭子。

傘の影でDARK PREDICTIONを読んでもらう。
まだ「みんなにはナイショ」という恥じらいかわいい。

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「とても、大事なことだと思うんです」
冒頭の「それが、重要なことなのでしょうか」の対比。

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傘を放り、武内Pとともに光の下に顕現する蘭子様かわいい。

14才らしい微妙なためらいがとても丁寧に現れたシーンです。

 

3,右/左 -もたらす者と授かる者
画面の作り方の話です。
6年前の記事ですがこれが一番わかりやすい。
とある科学の超電磁砲 OPの演出の解説 一貫性のある正負の方向 - http://d.hatena.ne.jp/karimikarimi/20091121/1258765953


Fate/Stay night UBWのEDなんて完全にこれでしたね。
映像作品の基本ですが、右は正(主にストーリーの主役)、左は負(主に敵や外部のもの)を表します。


本作だとこんなところに現れます。

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武内Pが上の立場で話してるので、右。

 

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しぶりんが武内Pにヒントを与えるので、右。

 

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かな子がお菓子をあげるので、右。

 

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蘭子の心理描写が主軸のシーンなので、右。

 

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変わり種。
左から右へ、弱気な蘭子に向かって元気な子供が走ってくる。
蘭子の弱々しさが浮き彫りになる。

 

まとめ

「言の葉は不得手、秘めたる真意を伝える秘術はないものか…」
武内Pは蘭子の豪奢な邪気眼フレーズばかりに囚われてしまっています。

その向こうに見える本音に気づけるか。

 

蘭子と武内P、アイドルとプロデューサー。
相対するふたりがともに成長する、最高の30分でした。

 

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おまけ

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白バラ(心からの尊敬・無邪気・清純・純潔・恋の吐息・相思相愛・尊敬・素朴)

かすみ草(夢見心地・清らかな心・魅力、無邪気)。

 

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すごい削り方だ… 

 

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「後程皆さんに聞いてみる」が消されている。

でも結局しぶりんの進言でそうすることに。

 

みりあちゃん
壮大なオチ担当だったみりあちゃんですが、2つも伏線がありました。

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蘭子の言葉にみんな首を傾げるなか、一人「うん、うん」と頷き、

 

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蘭子の相談を聞いて最初に口を開いたのはみりあちゃんでした。

ょぅι゛ょ代表のみりあちゃんだけが蘭子を理解していたという意外性、これもアンビバレントの一種。


闇にのまれよ!!(お疲れ様でした)