きっと何も特別なことはなかった。-Galileo Galileiの"終了"によせて-
今この僅かに書き出しを入力するのに非常に精神的な労力を要しており、存外自分がGalileo Galilei(以下gg)を気に入っていたことを改めて確信しています。
正直いつかこういう時が来る気はしてたけど、ここ数年どんどんサウンドが良くなっていってて、今週には新作アルバムとツアーを控えたこのタイミングで宣言されると思ってはいなかった。
ggを始めて認識したのはauのCMでした。桜吹雪の舞う教室で演奏する彼らはまだ10代で、その時にしか生み出せない、突き抜ける爽快感が間違いなくそこにありました。
「あの花」とのタイアップ曲『青い栞』によって彼らは一気に認知度を上げますが、そこから彼らの試行錯誤があったことは音源からありありと読み取れます。
メンバーの脱退を経て尾崎兄弟とベース佐孝の3人体制となってリリースされたミニアルバム『Baby, It's Cold Outside』を皮切りにして、彼らはそれまでのシングルコイルのトーンを活かしたギターロックから、一気にローファイなシューゲイザーサウンドに傾倒していきます。
BPM160以上、四つ打ち、Aメロ早口…ここ数年のバンドサウンドのトレンド。
そのどれにも逆行したサウンドは、POP ETCというパートナーを得てさらに力を増しました。
制作現場を地元の北海道から動かさなかったことが、ggのチルポップ的な側面をより強化していたことは間違いなくて、彼らの描く風景は日本的なノスタルジアのさらに向こう側にある、人間の最果てみたいなところを描いていました。
それは日本ならきっと北海道でしか得られない色とか風とか風景とか気温とか日差しとか、そういうものの賜物だと思う。
2014年にリリースされた『See More Glass』は今でも毎日のように聴いてます。
M-1『サニーデイハッピーエンド』、そして続くM-2『Mrs. summer』はある種の夏を描いた作品のひとつの到達点だと思う。
さまざまな曲で描かれる"君"はどれもかわいらしさを帯びているのに、"僕"はどうにもなかなか目を向けることもままならないほど眩しくて、変に達観してないのに妙な懐かしさとリアリズムが混ざった物語はどれも瑞々しさに満ちています。
そして最新アルバムのリード曲としてMV公開された『ウェンズデイ』。
ここでggは死も生も限りなくシームレスに等価であることを示してしまいました。
仄かな温かみのあるイントロを裏切る歌い出しのフレーズは「どうでもいい葬式で」。
あとは曲と映像を見れば分かるとおり、自分の生(=性)のために、遠回しに誰かの死を望んでしまう"僕"の存在を、ggはまるで誰にでも起こりうる日常のように淡々と描いています。
だから今回の"終了"も、ある意味当然の帰結なのかもしれない。
必要だから、そういう時が来たから、終える。
例えそれが生命みたいな自分たちの居場所であったとしても。
振り返ってみると、Galileo Galileiというバンドは僕たちにとって、子供の時に大切に乗っていた“おもちゃの車”のようなものだったのかもしれません。
けれど“おもちゃの車”では、庭の芝生から先へとは進めなかったのです。
僕たちはその先にある、どこまでも続く険しいコンクリートの道路を走ってみたくなってしまったのです。
そして大人になった今、この愛する“おもちゃの車”から降りることを決心しました。(Galileo Galilei コメント)
大人になるために、置いていくものは置いていく。
ただそれだけのことなんだと思います。
こんなきれいな生と死を生み出したggを、春が来るまできっちり見守っていきたいと思います。
僕が僕で いられたら
どれだけいいだろうかなんて
嘆くだけの 止まった時間を 抜けだそう
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