1k≒innocence

散文だったり、アニメ分析だったり。日常が切り取られていく姿は夏のよう。

「声優は結婚するもの」「忘年会は面倒なもの」あらゆるものから建前がなくなる時代

突然の声優の結婚報告ラッシュで新年から生きる気力を失っている方々が多々いらっしゃるようです。

個人的に結婚おおいに結構なのですが、ああやって示し合わせたように発表されるのはいかにも日本人らしいといいますか、事務所も関係取引先も所属する声優の慶事くらい周りを気にせず堂々と発表なさったらいかがですかという印象です。

それほどに女性声優の結婚への建前がひどく凝り固まったものであり、特にタレント的に活躍されている方にとってはセンシティブな話題のようです。最近はまぞくと魔法少女が結婚していましたし、声優とスポーツ選手の結婚もなんら問題ないでしょう。

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一方報道の不正確さへのカウンターとしてではありますが、庵野秀明というキーパーソンが数十年続くエヴァコンテンツの根幹を公開する時代がきてしまいました。

 

これまで新劇場版ヱヴァが延期になる度にインターネットは庵野何やってんのと騒ぎ立てていたわけですが、これを読む限りクリエイターが自身の創作に没頭できるような環境ではなかったことは明白であります。むしろ関係者がやっと『シン』の公開までこぎつけてくれたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

 

しかしながらこの記事はかつてオタク産業の一端を大きく担ったガイナックスの凋落をまざまざと見せつけるものであり、古巣の実態をこのような形で世間に公開しなければならなった庵野秀明本人や関係者、そしてかつてガイナックス作品に強い憧れや関心を寄せた人々の気持ちもまた大きく揺らがせてしまうものです。

ガイナ全盛期の多くの主要クリエイターが既にカラーやトリガーに移り、最近でも『プロメア』などガイナの血脈を受け継ぐ作品は生まれているとはいえ、もうあの頃のガイナックスは二度と戻らないと思うとやるせない気持ちになります。アニメ制作会社には後ろめたい部分もある、そんな直視したくない現実が揺るぎない事実としてつきつけられました。

社会の建前がなくなっていく

芸能人は結婚するもの、どんな有名な人も逮捕される、大企業は永続しない、残業はしたくないもの、忘年会は行きたくないもの…「建前」が崩壊し、今までほんのり感じていた公然の秘密のように扱われていた人々の「本音」が一気に表層化してきました。釘宮理恵が確立した、本音と建前の到達点であるツンデレキャラというジャンルが落ち着きを見せ、「やさしいせかい」と表現されるような素直でストレートなキャラが支持されるようになったのも無関係ではないでしょう。

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一般的なツンデレの一例

 

「今まで強制されていた悪習がなくなってよろしい」という面もあり個人的にも歓迎なのですが、「集団の建前」はこれまで日本人を強く規定してきたルールでありますから、これがなくなると一気に集団としての日本人の行動力が落ちる時代が来そうだなあと危惧しています。

一種強迫的な面もあるのですが、これまで様々な組織が個ではなく集団の目標達成を優先して動いてきたわけで、個の本音の優先度が上がってくると組織での意思統一に別の方法を模索しなければなりません。


前述の忘年会もこれまで「忘年会やるぞ社員全員参加!」と社長の一言で済んでいた会合も、各社員の出欠を確認して店選びをするようになるので、決定まで手間も時間もかかります。さらに出欠の確認はその場で一回聞けば終わるものではなく「あの人が出るなら行かない」など、幹事の知るところでない政治的な面もカバーしなればならず苦労が絶えません。結果として店選びが遅くなり、中途半端な規模の店で微妙な会になる未来が待っています。これは決して私の経験談ではなくフィクションです。

つまり我々日本人は、組織としてこれまでケアしてこなかった組織内での個人の意思を、結構真面目に相手しなければならなくなってきているわけです。

■結局強制されてしまう「選択の自由」

建前的な集団の行動原理が弱まると、すべて個人が考え、選択しなければなりません。それでいながら社会の画一的な規範や所属する組織のルールは依然存在するわけでして、「空気は読みながら自分の責任で選択」するという非常に高度な生き方が求められるようになります。選択肢が増え自由になったように見える世の中ですが、その分選択の責任は個人自身に帰属しますから、自己責任論が容赦なくふりかかる時代が訪れそうです。ましてや企業や学校への信頼度が下がっているのですから、さらに個人ベースで生き抜く思想が強制されるようになりそうです。ドラマなどでマイペースを貫く主人公像が支持されたり、自分の生き方を曲げないような姿勢のタレントが支持されるようになってきたのもその一環ではないでしょうか。


しかしながら皆が皆そうした生き方ができるわけではありません。

あらゆるものから建前がなくなる時代選択する意志が弱い人、そもそもいちいちなんでも選択すること自体面倒という人も多くおられることでしょう。そういった人には選択の自由はむしろネガティブに捉えられ、せっかくのチャンスも蔑ろにされてしまいそうです。さらにこれだけさまざまな場面で選択、選択と迫られる生き方では、何かあったときの社会的救済すら自己責任を理由に与えられないようなことも起きかねません。最近のサロンビジネスなんかも「何か正しい選択した気になってしまう」点でかなり危うい誘惑だなあと思っています。


いずれにせよ様々な場面で選択を迫られる以上、選択をするという行為そのものの経験値を貯めていくしかなさそうです。金も時間もない我々ですが、まずは小さな選択から達成させるスキームを自分の中でこなし、「これなら自分にもできた」という経験値の積み重ねを持って次の選択に備えるしかなさそうです。


アラサーもベテランの域に入ってきて、2019年がかなりモヤモヤしたことが多かったので思考整理的に少し真面目なことを書いてみました。

昨今のなろう系アニメの乱発ですっかり視聴アニメ本数が少なくなっており、また劇場アニメは良質な作品が多いもののブログでは語りづらい面があり早口なキモ・オタク記事が少なくなっており恐れ入ります。

最近は同人誌寄稿が多くなってきておりますので、主にアニクリと感傷マゾシリーズをご参考いただけると幸いです。

本年もどうぞよろしくお願いします。

 

 

本音×建前 カルタ

本音×建前 カルタ

  • 発売日: 2012/04/22
  • メディア: おもちゃ&ホビー