1k≒innocence

散文だったり、アニメ分析だったり。日常が切り取られていく姿は夏のよう。

男だけどやっぱり映画『ハイ☆スピード-Free! Starting Days-』に落涙してしまった話

 

 

 

↑視聴直後の様子です。

 

※そんなにネタバレしてませんが、前情報を入れたくない人は劇場で鑑賞してから読んでね!

 

映画『ハイ☆スピード Free! Starting Days』を初日初回で見てきました。
あの衝撃の映画決定告知からもう9ヶ月も経ってしまったんですね…。
※過去記事参照↓

 

sakasakaykhm.hatenablog.com

 

 

 

新キャラクターを加え、TV版で高校生だった主人公たちの中学生編を描いた本作。
同じ時間軸の小説が原案となっており、さらにコミカライズされた小学生編が存在します。

 

少しややこしいのですが時系列としては

高校生編…Free!(TVアニメ)
中学生編…ハイ☆スピード(小説・映画)※今回はココ!
小学生編…ハイ☆スピード(小説・コミカライズ)

という構成です。

 

主人公の七瀬遙たちが高校生編で初めて出会ったり、また中学生編で遠くに離れてしまったキャラクターたちも登場したりとオールスター的な豪華作品になっています。
「えー中学生編だったらアイツもコイツもいないじゃん!!」というファンの方々も救済されること間違いなし。

 

今回僕は敢えて中学生編の小説を読まず、小学生編のコミカライズだけを読んで鑑賞しました。今回の映画は前情報なしの状態で見て楽しめる作品だとTV版から確信があったからで、その予想は期待どおりどころか大幅に超えられてしまいました。

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そういう意味ではまだ『Free!』を見てない人は幸せです。
何故なら『ハイ☆スピード』を見てから、時系列的は後の話になる『Free!』を見れば、多くの既存視聴者が二度と得られない別の視点で楽しめるわけですから…!(スターウォーズみたいだ)

 

京アニは『響け!ユーフォニアム』で実直かつ繊細に「青春」を描ききり、
たまこまーけっと』や『たまこラブストーリー』では見てるこっちが恥ずかしくなるくらい純朴な感情を京都の街中に染み渡らせました。

Free!』もまたそうした作品であるのは疑いようがありません。


そして中学生という「子供でもない、でもまだ青春ってほどでもない」微妙な存在を取り上げた『ハイ☆スピード』が挑戦し、描いた風景。

見る側のプリミティブな部分に容赦なく入り込んでくる、暴力的なほどの力に本作は満ち満ちていました。

 

■「男子中学生」の難しさ

そもそも「男子中学生」をモチーフにした作品ってそうそう多くないと思うんです。(たまたま見てないだけかもしれませんが)
女子中学生だと『ゆるゆり』しかり『超電磁砲』しかりいろいろあるんですが。

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男子中学生って恥ずかしいんですよね。子供ぶる感じでもないし、でも背伸びできるほどの能力もない。だからどうしても描く側には扱いが難しい存在だと思います。

 

それにも関わらず『ハイ☆スピード』では冒頭から男が見ると「うわーこれ!!これめっちゃ男子中学生だ!!」と身悶えしそうなシーンがたくさん出てきます。

 

・自分のことを「俺」と呼び出す
・初めてヘアワックス使って家族に笑われる
・お前すけべー!!とからかったらお前の発想の方がすけべだと返されて自爆する

…など

 

最初10分くらい「ああもうやめてくれ~!!」という気持ちでいっぱいになってしまいましたが、これがあるからこそ後々の葛藤や和解が自分のことのように感じられるわけです。
なので男性諸君も早く観ていただいて劇場で身悶えしてください。(仲間がほしい)

恥ずかしいところまで描くからこそ、中学生という存在の真価か輝いてくるわけです。


■中学生の「始まりの日々」

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冒頭、七瀬遙と親友の橘真琴の中学入学式から物語はスタートします。

新しく袖を通した学ラン、田植え前の農道に咲き誇る桜、冬から抜けだしたばかりの若い色の青空…

「春が来ると無条件に楽しい」、中学生の頃って確かにそんな気持ちがあったように思います。


バンドサウンドのビートにストリングスとピアノの伸びやかなフレーズの劇伴と合わさり、新生活の素晴らしい未来を示唆するに十分な演出になっています。

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そしてこのワクワクした気持ちは『アイドルマスターシンデレラガールズ』の1話にも通じるものでした。


「ああ、きっと彼らは大変なことをなんとか乗り越えて、素晴らしい成長をしていくんだな…」


そのポテンシャルをアラサー社会人はただ無力に受け入れるしかなく、その無力さに涙するわけです。


■中学生だからわからない、なにがわからないかわからない

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「なにかがこわい、嫌だ。でも、どうしたらいいかわからない」

本作のメインキャラクターはそれぞれに困難に直面します。
なんのために泳ぐのか、もしかしたら泳げなくなってしまうのか、あの人とどう向き合えばいいのか。


ついこの間まで小学生だった彼らにとって、とても難しい問題ばかりです。
そしてそれが特に原因ではないはずなのに、なんとなく、仲違いしてしまう。

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しかし彼らは先輩や、あるいは彼ら自身の相互のはたらきかけによって困難を乗り越えます。
そしてまたなんとなく、違えた気持ちが雪解けしていく。

 

ただ、ここで得た絆を彼らは大切に育て始めます。

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高校生ほど自覚的でない、中学生ならではの柔軟な心がここに現れていました。
男子中学生というマージナルな存在であるからこそ、映える瞬間かここにあるわけです。

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こんな美しい一瞬を、劇中の時間でたった1ヶ月の中で彼らは何度も何度も創りあげます。
高校生よりもさらに瞬発力の高い「今この瞬間」に、彼らは生きています。


京アニの提示する新規性

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氷菓』でも見れらたように、作監の西屋さんによるリアリズムの中に可憐さを込めたキャラクターの立ち姿は、ほんの一瞬でも目を奪われるほど様になっています。
京アニで個人的に西屋さんの作画が一番好みなのですが、10代にしかない美しさを飾りすぎず描き続ける本作は全く飽きが来ません。

 

「安定の京アニ」という言葉ができたのは『CLANNAD』のあたりだったかと思いますが、決して過去の実績をスポイルもせず、またそれに胡座をかくこともなく新しい刺激を真摯に挑戦する京アニに、いい意味で「安定」という言葉は通じなくなってきているでしょう。

■まとめ

Free! ESの最終話終了後、感情のままに書いたポエムプログがあります。

(恥ずかしくて自分で読めない)

 

sakasakaykhm.hatenablog.com

 

 

個人的にFree!』は「七瀬遙が人間になる物語」なのですが、『ハイ☆スピード』ではそれを示唆するセリフが、それを発するに最も適したキャラクターの口から出ました。

 

神童である人も永遠に神童ではない。その変化にある断続性に気づいた時こそ、『Free!』や『ハイ☆スピード』の美しさに触れられた気がしてならないのです。


■おまけ

「いやーでも男子中学生の水着姿見続けるのもなあ…」という男性諸君もいらっしゃいますことでしょう。本作はモブの女子中学生が本気でかわいいので是非おすすめしたいのです。そのうちメインキャラクターたちもかわいく見えてきますよ!!!

そしてなにより天ちゃん先生こと西九条まりんさんの新規水着姿もあるぞ!!!!
本当に一瞬だから絶対に最後まで見逃すな!!!!

 

 

ネタバレ配慮してだいぶふわっとしたテキストになってしまいましたが、鑑賞後の方には何を言わんとしているか伝わっていると信じております。

 

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 「ヨーイ」の合図で踏みしめた

飛び出すのならここからだ

ハートの鐘が一つ鳴れば

さあ進むのさ

STAR/フジファブリック

 

「おつかれ、ハルちゃん!」