1k≒innocence

散文だったり、アニメ分析だったり。日常が切り取られていく姿は夏のよう。

コメディのはずの『だがしかし』が、すごく切ない物語に見えてきて心が痛い

人生で初めてサンデー作品を心から楽しんでいます。

 年明けからアニメになるみたいでかなりワクワクしております。

 

だがしかし(3) (少年サンデーコミックス)

だがしかし(3) (少年サンデーコミックス)

 

 

1-2巻では駄菓子を主軸とした読みきりスタイルのギャグ漫画といった様子でしたが、最新刊3巻でちょっと様子が変わってきました。


それまでは見られなかった強烈な物語性の萌芽がさりげなく散りばめられ始め、「これはコメディとしてだけ読むのはもったいないのではないか…?」という情念に駆られ始めています。
この感情はなんだ?恋か? と自問する日々が続いています。

 

ちなみに好きな駄菓子はふ菓子(ふーちゃんと無印良品)とボーロです。

 

敷島産業 はちみつ入ふーちゃん 10本×5袋

敷島産業 はちみつ入ふーちゃん 10本×5袋

 

 

 

大阪前田 乳ボーロ 120g×10袋

大阪前田 乳ボーロ 120g×10袋

 

特に ふーちゃんはマジでうまいです。しつこくない甘さと表面のカリカリ具合と中のふんわり具合が絶妙。

おかしのまちおかとかで買えるのでみんな食べてください。


■『だがしかし』を知らない人向けイントロダクション

 

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・鹿田ココノツ
実家が駄菓子屋の高校生。実家を継ぐ気はなく、漫画家になりたい。
歳相応に女の子に興味がある。

 

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・鹿田ヨウ
ココノツの父。駄菓子屋の8代目。駄菓子業界では有名人(らしい)。

ココノツに跡継ぎしてほしい。

 

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・枝垂ほたる
有名菓子企業のお嬢様。ヨウをスカウトするため、ココノツになんとか駄菓子屋を継がせようと毎日駄菓子の素晴らしさを刷り込もうとしている。

とにかく運が悪く、くじ系の菓子では当たりを引いたことがない。乳がすごい。

 

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・遠藤豆(トウ)
ココノツの友達。双子の妹がいる。

おはじきが顔面に当たったり、けん玉の剣が刺さったり、ほたるとは違ったベクトルで運が悪い。

 

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・遠藤サヤ
豆の双子の妹でココノツの幼なじみ。

幼少からココノツが気になっているが、駄菓子には全く興味が無い。

けん玉やメンコがやたらうまく、ほたるに尊敬されている。脚がすごい。

 

主にこの5人の交流を駄菓子を交えて描くコメディ作品です。
そう、これまでは。

 

■ひと夏の物語

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1巻を読み返すまですっかり忘れていたのですが、『だがしかし』は高校生の夏休みの物語でした。

つまりあらすじはこうなります。


『海沿いの田舎に住む少年。

そこに突然現れる謎の少女とともに、少年の夏休みが始まる!』

 

こう書くとすごいゼロ年代っぽい!
そう、『だがしかし』はセカイ系的設定の上に成り立っている作品なのです。

公式のキャッチフレーズも「ボーイ×ガール×だがしコメディ―」なのもさらにそれを増長しています。

 

「いやいやそんなwwww言うてサンデーのコメディ漫画ですぞwwんんwwお主wwwwwアニメの見過ぎでwwwwwww頭がおかしくなってしまったのでござろうにwwwwww」


という声が聞こえてきそうですが、いやなんだ、これを見てほしい。

 

 

 

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「いつまでここにいれるのか、わからないしね」


なんです、

 

なんですかこれは。

 

 


この1コマが放つ、小気味よい不穏さは。

 

「お別れね、ココノツ君」

 

 

こんなセリフが本誌に登場してしまう可能性を、僕ら読者は抱えてしまいました。

 楽しい愉快なコメディ漫画だったはずなのに。

 

■「『君』がいた夏が、終わる?」


突然現れた少女(年齢不詳)がある日、それもまた突然にしていなくなる日が来てしまう。


飲みかけのラムネを一口もらってしまったことも、パジャマ姿の元気なラジオ体操がひどく可愛かったことも、すべて思い出になる日が訪れるかもしれない…。

これをセカイ系と言わずしてなんと言うべきでしょうか。


さらに3巻では夏祭り回が3話もかけて描かれます。
本作初の長編ストーリーです。

 

この夏祭りでサヤの「幼なじみとの意図しない思い出の回帰と笑顔」

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ほたるの「誰もいない境内で少女の本心に触れてしまった気がした瞬間」

 

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同時にココノツ君は体験します。
ひらたく言えばひと夏の青春です。

夏祭りではその奇跡が見つかる。

 

過去、現在、そして未来。
コメディ漫画で軽視(あるいは黙殺)されがちな「時間軸」を、敢えて真正面から描くスタンスに、僕はただただ感動するばかりです。

 

『だがしかし』の時間は確実に生きているからこそ、キャラクターもまた活き活きしてくるわけです。


■『駄菓子』という幻燈機

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夏休み、名も無き田舎暮らしといった舞台装置を用意し、相乗効果的にそれぞれの持つ郷愁性を「駄菓子」という最高のスパイスでブーストさせることに本作は成功しています。


そして今、物語上で進行しているできごともいつか「駄菓子」によって、懐かしい思い出として振り返ることになるのでしょう。

 

 

ぶっちゃけ駄菓子そのものに何か思い入れがある人ってそんなにいないと思うんですよ。
ただ駄菓子を買うことが一大イベントだった年頃の、場所とか、気持ちとか、そういうものはみんなお持ちではないでしょうか。

 

作中、枝垂ほたるが駄菓子にかける情熱と喜びは、まさに読者の幼少期を追体験しているわけです。

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僕が5才位に時にめっちゃ通ってマルカワのフーセンガムの当たり引きまくった長尾商店も、今は建て直して自販機を置くだけになってしまいました。


もう青りんごのこざくら餅を買うこともフィリックスガムのデザインがなんか怖いなと思うことも出来ません。

 

「駄菓子」によって過去と今をつなぎあげた『だがしかし』が、ひどく愛おしい作品に見えてくるわけです。

 

いつか駄菓子と共にこの作品が心地よく思い出される日を願ってやみません。

 

 

■さいご

もっと「あーっ!!サヤ師!!サヤ師かわいいよんふっひょうおおうう!!」というテキストを書きたかったのですが多分みんな思ってることなのでやめました。
あと作者のコトヤマ先生のついったーを2年分遡ってイラストをふぁぼりまくってきたのでご報告いたします。

 

最高です。

 

www.youtube.com

 

Boy meets girl それがすべて
君がいて僕がいた日々はきっと 永遠の瞬間


(PERFECT BLUE/Base Ball Bear)

 

 

「私とセカイ、どちらを選ぶの?」