1k≒innocence

散文だったり、アニメ分析だったり。日常が切り取られていく姿は夏のよう。

矢澤にこが貧乏であることを背景に見るラブライブ!

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 まず最初に言っておかねばならない。徹頭徹尾、園田海未推しです。うみチカだと特に嬉しい。なるほど三森すずこ

 

 しかし悲しいかな、青い子担当のはずの園田海未さんは真面目系お姉さんで、不憫女子ではなかったのです。それでは私の不憫女子アンテナは響かない。迷走し電波受信に奔走したアンテナは、ついにひとりの不憫女子をキャッチした。

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 矢澤にこ

 

 

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 はっきり言って一番あざとさを感じていたので、一番興味がないキャラだった。それどころか正直イラッとしていた。なにがにっこにこにーっ☆だ。てめえは中野にはなれねえ。

 しかしこの視点は回を重ねるごとに修正されることになる。

 

 まずいろいろ残念。同期の三年生はおろか、一年生にすら及ばないプロポーション、これまで何年も必死に練習してきてやっと素人のメンバーに追いつく程度のパフォーマンス、画面から適宜外される影の薄さ。10話の別荘到着時のシーンではほぼ完全にほのかさん達に隠れて見えていない。(赤座力は高いといえる

 そして残念なのはなにも振る舞いだけではない。

 

 矢澤には友達がいない。

 放課後にクラスメイトに話しかけられない。放課後に一人まっすぐ向かうアイドル研究部の部室は明らかに手狭な部屋だし、部屋札はただの張り紙。窓は完全にカーテンで覆われている(多分写真集が日焼けするからとかいう理由だと思われるが、演出としては孤立や隔絶を強調させる。

 以前矢澤はスクールアイドルをしていたが意識の違いで解散してしまっている。その後「ひとりでアイドルとかだっせーww」「アイドルアイドルうっさいんだよね、アイツ」と影で言われまくってきたのは想像に難くない。しかも女子校で。逃げ場なし。それで三年間あれだけ写真集とかDVD買いまくって揃えるだけの生活。おお、こわい。

 

 さらに矢澤はほぼ間違いなく貧乏である。コミック版では既に「学費を理由にUTX学園の入学を諦め」ているらしい。アニメ版でその描写はないが、貧しさを想起させる描写は多い。

 

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 第六話のアイドル力対決で「チラシ配りは得意中の得意」と発言。その後「時代は変わったの…!?」と自身のチラシ配り力の衰えを感じている。秋葉原でのチラシ配りが得意な(だった)ということはどんなことか。ちょっと泣けてくる。

 第九話で「矢澤が家に帰るのがこっそり描かれている」というネタもあるが(http://blog.livedoor.jp/nizigami/archives/24510587.html)、バイトに行ったと考えればこんないい立地に家があるというよりかは理由がつきやすい。いや別に家でもいいのだが、今だってアイドルグッズ購入のためにバイトしているはず。チラシ配りを秋葉原でしていたと考えれば、引き続きバイトは秋葉原でしている想像だってつく。いけないバイトでないことを願う(薄い本展開

 

 さらに第十話で直接的な劣等感を貴族・西木野にぶつけはじめる。別荘にぐぬぬし、料理人がいることにぐぬぬする。そして威勢を張りながら結局自分で料理をふるまってしまう。

 料理スキルが高い事自体は別にマイナス要素ではない。むしろプラスである。本人が言うように「料理のできるアイドル」で売りだしたっていい。しかし矢澤は自身の料理スキルをひた隠しにしようとしていた。つまり矢澤にとって料理は「うまくなりたくてなった」わけでない、必要に迫られて見についてしまったコンプレックスにも近いものといえる。

 そこから想像できる「自分で料理しなければならない家庭」を、矢澤は自分の料理スキルから露呈させたくなかったのではないだろうか。

(この記事は10話放送までに書かれたものです)

 また矢澤は「食べること」に執着が強い要素も見える。前述の料理もそうだし、一方でポテトを奪い食いしたりもする。さらにスイカ割りではスイカをささっと持ち去ってしまう(あれ下手したら矢澤の頭割られるよね

 食べ物への執着が花陽と違い「大食い」ではなく、食べ物があれば手を出す、という表れ方をするのに、どんな背景があるかを考えるとウッ心が痛い

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 矢澤はアイドルとは「人を笑顔にする仕事」と言い、「キャラ付け」にも重要性を感じていて、ちょっと困ったり見せ場があったりすると誰も求めていないアイドルキャラを出す。

 矢澤にとってアイドルとは、向き合いたくない素の自分を一時だけ変えられる/変えてくれる存在であり、自分がアイドルになることでみんなを笑顔にしたい、という気持ちの現れなのでは…そう考えるだけで矢澤があまりにもできた人間に見えくるからすごい。

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 矢澤は中野になれない、と冒頭に記載したが(もちろん中野梓のことである)、矢澤には元々中野になる素質がなかった。中野は音楽については完全にエリートだが、矢澤は完全にこじらせたワナビでしかない。

 「鉄道オタクは鉄道会社に就職できない」的な壁を矢澤は与えられ、やっとアイドルになれそうなところで「アイドルなんて興味ない」と明言していた西木野や絢瀬に簡単に追いぬかれてしまう。

 こんなに不憫な女子は久々である。ワナビ的という点で、かなりホタクの意識に沿った不憫女子である。矢澤はできすぎた他のメンバーと、視聴者のホタクを同位させる意味でかなり重要な役割を与えられていると言える。

 

 報われない女子ってなんでこんなにかわいいんでしょうね。二次元だけであってほしいですが。そしてどんな形で報われるか、最後まで見届けたくなるというものです。